日本での生命保険加入率は約90パーセントと言われています。
ご自身が加入されている生命保険の受取人や受取金額は、きちんと把握されていると思います。
では、配偶者やその他のご家族が加入されている生命保険が、どのようになっているかご存じでしょうか?
 今回は、対策をすれば相続税の発生を回避できたのに、対策をしなかったことで二次相続の際に相続税が発生した事例をご紹介し、考えられる対策についてご紹介いたします。

【前提1】家族構成

【前提2】資産状況

父の固有財産

現預金 2,000万円
土地(自宅)評価額 2,000万円
建物(自宅)評価額 1,000万円
生命保険金 受取人 母 2,000万円

母の固有財産

現預金 200万円

必要な知識

『二次相続』

 二次相続とは、例えば父が亡くなった後に母が亡くなる場合の、『後に亡くなった方の相続のこと』を言います。
また、『前に亡くなった方の相続のこと』は一次相続と言います。

二次相続で気を付けること
・基礎控除額が減少する
・生命保険金や死亡退職金の非課税限度額が減少する
・小規模宅地等の特例が使用できなくなる可能性がある
・一次相続で配偶者が相続税を納めていれば、二次相続で相次相続控除が使える場合がある

『生命保険金の非課税限度額』

 被相続人(亡くなった方のこと)が亡くなったことにより、生命保険金が支払われて、その保険料の支払いを被相続人がしていた場合には、その生命保険金は相続税の課税対象になります。
 ただし、その保険金の受取人が相続人であれば以下の算式により計算された金額を超える部分だけが課税対象となります。

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

『小規模宅地等の特例』

 今回の事例では、特定居住用宅地等の特例の利用が考えられます。
被相続人と生計を一にしていた親族が居住していた場合には、取得者ごとの要件がありますが、要件を満たせば土地評価額が80%減額されます。
 ただし、二次相続において子供が持ち家の場合にはこの特例が使用できません。

一次相続時

遺産分割方針

 父が亡くなったため相続税額の計算を行いました。遺産分割方針は以下の通りです。
現預金 2,000万円:子供二人に1,000万円ずつ
土地建物(自宅):母
生命保険金:受取人 母

相続税額

現預金 2,000万円
土地(自宅)評価額 2,000万円⇒小規模宅地等の特例(80%減)⇒ 課税対象額 400万円
建物(自宅)評価額 1,000万円
生命保険金 受取人 母 2,000万円⇒生命保険金の非課税(1,500万円非課税)⇒ 課税対象額 500万円
財産総額 2,000+400+1,000+500=3,900万円
相続税の基礎控除額 3,000+600×3人=4,800万円
従って、 3,900≦4,800 相続税 0円

二次相続時

一次相続で対策しなかったパターン

遺産分割方針

 父の後に母が亡くなったため相続税額の計算を行いました。遺産分割方針は以下の通りです。
現預金 200万円:子供二人に100万円ずつ
父から受け取った保険金分の現預金 2,000万円:子供二人に1,000万円ずつ
土地建物(自宅):長男

相続税額

現預金 2,200万円
土地(自宅)評価額 2,000万円 小規模宅地等の特例は適用無し
建物(自宅)評価額 1,000万円
財産総額 2,200+2,000+1,000=5,200万円
相続税の基礎控除額 3,000+600×2人=4,200万円
従って、 5,200-4,200=1,000万円のため 相続税額 100万円

一次相続で対策したパターン

遺産分割方針

 一次相続の前に、生命保険の受取人を母1,000万円、長男500万円、次男500万円として変更して対策を行いました。

 父の後に母が亡くなったため相続税額の計算を行いました。遺産分割方針は以下の通りです。
現預金 200万円:子供二人に100万円ずつ
父から受け取った保険金分の現預金 1,000万円:子供二人に500万円ずつ
土地建物(自宅):長男

相続税額

現預金 1,200万円
土地(自宅)評価額 2,000万円 小規模宅地等の特例無し
建物(自宅)評価額 1,000万円
財産総額 1,200+2,000+1,000=4,200万円
相続税の基礎控除額 3,000+600×2人=4,200万円
従って、 4,200≦4,200 相続税 0円

解説

 一次相続の前に、保険金の受取人変更を行うことで、二次相続の税額が変わります
一般のご家庭でも適切な対策を行わない場合には、相続税が発生することをご理解いただいたと思います。
生命保険金の受取人変更は配偶者の生活費を十分に検討したうえで、専門家に相談しながら進めましょう。

☆以下の方々はお問い合わせください☆

・身近に相続の専門家がいない
・二次相続を踏まえてシュミレーションをして欲しい
・生前に相続対策をしておきたい
・生命保険金の受取人変更以外にいい対策がないか教えて欲しい